成田国際空港から車で10分ほど。井尻弘さんが代表取締役を務める生産者連合『デコポン』は、千葉県の大栄町にあります。名前は『デコポン』だけど、つくっているのは野菜。ちょっとややこしいですね。「デコポンを設立したのは平成6年の4月で、ちょうど、みかんのデコポンが市場の評価を得て、生活者に認知され始めた時期なんです。デコポンって見た目はあまり良くないけれど、食味はバツグン。きっとみなさんに愛されるくだものになるだろうな、と確信して、その名にあやかりました」と井尻さん。「私が、デコポンの産地、愛媛の人間だったこともありますしね」
愛媛県出身の井尻さんが、どうして千葉県で農業を?「私は、みかん農家に生まれ、愛媛県の農業改良普及員として農業と関わっていました。でも、だんだん自分の指導している農業に疑問を感じるようになったんです。農薬や化学肥料を使って、見かけのよい農作物を生産し、売る。それはよい農業なのだろうか、と。そんなときに、千葉の生産者と知りあいました。群馬でも茨城でも良かったんだけど、農業に対する考えや志を同じくする人たちがいたのが、千葉だった。偶然もひとつの出会いですよね。ならば、この千葉で、流通面から農業者をバックアップする先駆けになろうと決めて『デコポン』を立ち上げたんです」
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